【ドミニカ共和国de協力隊(5)】髪は女の命? アジア人の髪を盗む泥棒もいる!

おしゃれが大好きな高校生。髪を美しく保つためにネットを被って登校する(右端)

雨が降り出すと大慌てでビニール袋やごみ袋で頭を覆う女性たち――。これは、ドミニカ共和国でよく目にする光景だ。何をしているのかと思えば、ヘアスタイルを守っているのだ。

ドミニカ人女性の髪へのこだわりは異様なまでに強い。週に1度は美容院に通う(特に土曜日が多い)。そこで髪の毛を洗い、縮れ毛をストレートにするため、これでもかというほどくしで髪を強く引っ張りながらドライヤーで乾かす。湿気を含むと髪の毛が縮れるため、南国なのに洗髪は週に1度。雨は髪の毛にとって天敵なのだ。ちなみにドミニカ共和国の人口の1割はアフリカ系、7割が白人と黒人の混血となっている。

ドミニカ人女性は生まれながらの縮れ毛を「(質の)悪い髪」、アジア系の直毛を「良い髪」と呼ぶ。ストレートヘアは憧れの的であり、美の基準といっても過言ではない。日本では一般的な私の髪の毛も、この国に来て、これまで何人に触られたかわからない。私が「髪は毎日洗うし、ドライヤーで乾燥させていないよ」と言うと、「それで髪の毛は大丈夫なのか」とドミニカ人は驚く。

ドミニカ共和国には「髪の毛泥棒」がいる。ターゲットは中国系住民のストレートヘアだ。ストレートな髪の毛は人気があり、買い手もつく。 路上で歩いていた長髪の中国人の女性が突如、押さえつけられ、はさみで髪を切られ、盗まれるという被害も少なからずあると聞く。

ネットを頭に被って外出するドミニカ人女性も多くいる。たいては月曜日だ。そのネットが何の役割を果たすのか、私は最初わからなかった。聞くと、サロンできれいにセットした髪をストレートに保つために覆うという。普段着とマッチしない不思議なネットを着けて外出する方が恥ずかしい気がしなくもないが、“美しい髪の毛”を死守したい乙女心がそうさせるのだろう。

ドミニカ人女性のおしゃれは髪の毛だけではない。ネイル、アクセサリー、服装へのこだわりも強い。美容院の多くはネイルサロンを併設していて、好みの絵や柄をつめに描いてくれる。しかも価格も日本円にして250円からと手ごろ。日本ではあまり見ないド派手な色や毒々しい色も取り入れるのがドミニカ流。外出や祭りのときは特に気合いを入れる。つめの美しさも女性の美の基準のひとつとなる。

知りあいのドミニカ人女性教師は言う。「食べていくことがもちろん、生活の中で一番大事。でもその次に着飾ることを大切にしているわ。貧しい気持ちで生きたくないじゃない。貧しさから少しでも気を紛らわすためにおしゃれをするのよ。貧しい気持ちになるときこそ、精一杯おしゃれをするの!」

彼女の価値観を聞いて私は大いに納得した。状況は違うけれど、私も外出したくないほど気分が落ち込んだとき、自分を勇気づけるために大好きな洋服を選んだり、メイクをしたりする。おしゃれは、女性にとって前向きに生きる活力の源。こうした女心は国籍を問わず共通しているようだ。(種中 恵)